PCSK9阻害薬を使用する。MTP阻害薬,新フィブラートがガイドラインに追記される
今年改定予定の動脈硬化性疾患予防ガイドライン改定作業を日本動脈硬化学会が進めています。治療薬関係では、脂質異常症治療薬として2016年承認されたPCSK9阻害薬のほか、承認申請中のMTP阻害薬やフィブラート系薬を追記する方針です。PCSK9阻害薬については、家族性高コレステロール血症患者における冠動脈疾患の1次予防を目的とした使用の考え方を示す見通しです。
推奨のGradingを行う
今回からMindsの手法で作成し、推奨のグレーディングを行います。治療薬に関しては、昨年相次いで承認されたPCSK9阻害薬のエボロクマブ(製品名「レパーサ」)、アリロクマブ(「プラルエント」)を取り上げます。両剤ともに医療費への影響も踏まえて家族性高コレステロール血症での使用を最優先に考えるものの、家族性高コレステロール血症患者における冠動脈疾患の1次予防を目的とした使用法はまだ確立されていないため、例えばスタチンにエゼチミブや胆汁酸吸着レジン、プロブコールなどを併用してからPCSK9阻害薬を投与する患者、より早期からPCSK9阻害薬を投与すべき患者など、使用を判断する基準を検討します。2012年のガイドラインでは、ヘテロ接合体の家族性高コレステロール血症患者のLDL-C管理目標値を100mg/dL未満とし、到達が困難な場合は治療前値の50%未満と定めていますが、PCSK9阻害薬の登場により目標値が引き下げられる可能性もあります。
MTP阻害薬や選択的PPARα修飾薬も登場
ガイドライン2017では、FHホモ接合体に特異的に効くMTP阻害薬ロミタピドも取り上げる見通しです。新規フィブラート系薬として申請中の選択的PPARα修飾薬ペマフィブラートも登場する見込みです。同剤は中性脂肪を低下させる核内受容体PPARαを選択的に活性化するほか、腎機能低下時に投与可能、スタチンとの併用可能などの特長があり、他のフィブラート系薬と同様に位置付けるかどうかも検討課題となります。現行ガイドラインにすでに記載されているエゼチミブは、IMPROVE-IT試験の結果に基づき、急性冠症候群に対するスタチンへの上乗せが推奨されます。小児の家族性高コレステロール血症に関しては日本小児科学会と共同で世界初の小児家族性高コレステロール血症診療ガイドを作成中です。海外と同様に、スタチンを小児家族性高コレステロール血症への第1選択薬に位置付けることになれば、そうした要点を動脈硬化予防の新GLにも反映させる予定です。ガイドライン2012では、「NIPPON DATA80」から10年間の冠動脈疾患による死亡確率(絶対リスク)を算出し、1次予防のための3つの管理区分を定め、それぞれ脂質管理目標値を示していましたが、ガイドライン2017では冠動脈疾患の発症率を重視した内容に改める方針です。その際に使用する疫学研究は「吹田研究」「久山町研究」などを候補とし、スタチン投与が開始された後の患者を含むコホートを用いる予定になっています。2次予防のLDL-C管理目標値もガイドライン2017の検討項目に入っています。ガイドライン2012では目標値を100mg/dL未満に設定しています。急性冠症候群、喫煙、糖尿病、メタボリックシンドロームなどを合併する高リスク例についてはより厳格なLDL-C管理を推奨していますが、具体的な目標値までは示していません。患者のスクリーニングにおけるnon HDL-Cの使用とその管理目標値(LDL-C+30mg/dL)、LDL-C測定法をFriedewald式のみに限定するか否かなども改訂の論点になるとみられます。