循環器内科

動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017の概要

2月 9, 2017

循環器内科が、動脈硬化症を予防する!動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017の概要

動脈硬化性疾患

動脈硬化

動脈硬化性疾患予防ガイドラインを作成している日本動脈硬化学会は1月29日、作成を進めている「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017」の概要を公表しました。

PSCK9阻害薬の長期安全性

薬物療法の項目ではPCSK9阻害薬について、長期投与の安全性は確認されていないと指摘しています。一方、有効性に関してはスタチンを上回るLDL-C低下効果を有していると記しています。スタチンとエゼチミブの併用療法を、脳心血管病の発症予防で強く推奨することになっています。 「適応と有効性は確立されているが、長期投与に関する安全性はまだ確認されていない」との位置付け。脂質異常症治療薬の特性を表す一覧では、PCSK9阻害薬で50%以上のLDL-C低下効果、10~30%のトリグリセライド低下効果などが得られ、スタチンを上回ることを明記する予定です。

クリニカルクエスチョンとシステマティックレビューを導入

新ガイドライン案ではクリニカルクエスチョン(CQ)とシステマティックレビューを導入。また臨床試験などのエビデンスレベルは5段階(1+~4)、疫学研究のエビデンスレベルは4段階(E-Ia~E-III)に分け、推奨レベルに「グレードA(強い推奨)」と「グレードB(弱い推奨)」の2段階を設ける予定です。 薬物療法の項目でもCQを用い、推奨する薬剤や管理目標値を解説。スタチンによるLDL-C低下療法については、「相対的な脳・心血管イベント発症リスクの抑制効果は、人種や絶対リスクにかかわらず認められることが証明されている」(エビデンスレベル1+、推奨レベルA)」とし、日本人でもイベント予防で第1選択薬となることを示す予定です。スタチンと他のコレステロール低下薬との併用療法ではエゼチミブを強く推奨し、CQで「急性冠症候群患者における脳心血管病の発症を予防する」(1+、A)と記載します。LDL-Cの管理目標値については現ガイドラインと大きく変わらず、1次予防の「高リスク」患者に対して120mg/dL未満、2次予防患者に対して100mg/dL未満を設定します。ただ2次予防では100mg/dL未満の管理が難しい場合への対応として、50%以上のLDL-C低下を目標に置くことも可能とします。

2次予防

2次予防の中でも急性冠症候群、喫煙、糖尿病、慢性腎臓病といった高リスクな病態を合併する患者では、より厳格なLDL-C管理が必要であると言及しました。

家族性高コレステロール血症

成人の家族性高コレステロール血症の項目では、治療のフローチャートを提示する方針です。FHヘテロ接合体に対しては、生活習慣の改善と同時にスタチン最大耐用量などを用い、それでも効果不十分であればPCSK9阻害薬などを投与し、最終的にLDLアフェレーシスを使用します。LDL-C管理目標値は現ガイドラインと同様です。FHホモ接合体治療のフローチャートでは、MTP阻害薬ロミタピドも組み込みます。

吹田スコア

新ガイドライン案では動脈硬化性疾患の絶対リスク予測ツールとして、吹田研究によるスコア(吹田スコア)を採用します。吹田スコアによるモデルを基に、1次予防で「予想される10年間の冠動脈疾患発症リスク」が2%未満を「低リスク」、2~8%を「中リスク」、9%以上を「高リスク」に分類し、LDL-C管理目標値をそれぞれ160mg/dL未満、140mg/dL未満、120mg/dL未満に設定します。また脂質管理を進める上で、まずLDL-Cの管理目標値を達成し、引き続きNon-HDL-Cの目標値を目指すことなども付記する見込みです。

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