内科

脳卒中関連後遺症で入居中の高齢者

7月 16, 2016

脳卒中関連後遺症で入居中の高齢者には安全で入居者の尊厳を守る様なケアを行う事が重要である。

An occupational therapy intervention for residents with stroke related disabilities in UK care homes (OTCH): cluster randomisedcontrolled trial

Catherine M Sackley (Department of Physiotherapy, King’s College London, London, UK), etc.
BMJ 2015;350:h246 | doi: 10.1136/bmj.h468

ケアホーム

ケアホーム

Introduction

ケアホームとは、自分の世話を出来ない人々に対してケアを提供するイギリスの介護施設であり、看護ケアの有無を問わない。近年の国際統計では、脳卒中は1990年~2010年において死亡率が低下しているにも関わらず、機能障害を及ぼす原因の第3位を占めている。イギリスにおいて、脳卒中発症後の生存者の約25%は自宅に戻れず、長期的な施設ケアが必要となっている。脳卒中後の自宅療養者に対する作業療法の有効性には強いエビデンスが存在し、イギリスのガイドラインにおいても推奨されている。しかし、脳卒中関連の障害を持つ高齢なケアホーム入居者に対しては、小規模スタディで有効性は示唆されていたものの大規模RCTが存在しなかった。3ヶ月の作業療法がこれらの人々の機能活性を維持・改善するのに有益か評価する事が本研究の主目的である。

Methods

2群間の第3相クラスター無作為化比較試験(Fig.1)

対象 脳卒中・TIAの既往がある、1042人のケアホーム入居者 ※終末期ケア除く(Fig.1)

施設 イギリスにおける10床以上の228ケアホーム

期間 2010年5月~2013年3月

介入 3ヶ月間の作業療法(患者中心の目標設定・スタッフの教育・環境適応を適切に行う)

アウトカム

Primary 3か月後におけるBarthel index(ADLの機能的評価指数 20点満点)

Secondary 6,12か月後におけるBarthel index

3,6,12か月後におけるRivermead mobility index(移動能力の客観指標)

geriatric depression scale-15,(高齢者用うつ尺度)

EuroQol EQ-5D-3L questionnaire(QOL尺度)

参加者には試験の説明を行い、評価者はブラインド化した。

脳卒中・TIAが疑われる参加者に対して、家庭医のカルテを参照し確認を行った。

Results

3か月後におけるBarthel indexは介入群で0.19高かったが有意差なし。(Table 3)
(95%信頼区間 -0.33 ? 0.70, P=0.48)

6,12か月後においてもBarthel indexは有意差なし。(Table 4)

全期間においてRivermead mobility index, geriatric depression scale-15, EuroQol EQ-5D-3L questionnaireは有意差なし。(Table 3, 4)

Discussion

今回の試験において、患者中心の目標設定・スタッフの教育・適切な環境適応を含めても、3ヶ月の作業療法は脳卒中関連の機能障害を持つケアホーム入居者に対して有効であるというエビデンスは得られなかった。
サブグループ解析においても、Barthel indexの有意差のある違いは得られなかった。入居者3人以下、データ不明者を除いても結果は変わらなかった。Secondary measureにおいても違いはみられなかった。介入に関連する有害事象は報告がなかった。介入群において最初の3ヶ月における転倒率は18%と高かったが、長期施設入居者によける通常の予測範囲内であった。

Strengths and weakness

本研究は過去最大のクラスター無作為化比較試験である。

脳卒中関連のケアホーム入居者が予想より少なかった。

両群において17%の参加者が家庭医への確認が出来なかった。

参加者の平均年齢82.9歳は予想より若かった。

作業療法を完全に行える参加者は少なかった。

Barthel index良好である方が介入効果が高いと予想出来たが、違いは得られなかった。(Table 5)

脳卒中関連後遺症で入居中の高齢者にルーチンで作業療法を行う事は支持されないが、障害が軽度であれば有効ではあるかもしれない。活動レベルが低い場合は、別のアプローチが必要かもしれない。いずれにせよ、安全で入居者の尊厳を守る様なケアを行う事が重要である。

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