循環器内科

アミオダロン、リドカイン、またはプラセボを院外心停止症例に使用した比較検討

12月 5, 2016

アミオダロン、リドカイン、またはプラセボを院外心停止症例に使用した比較検討

Amiodarone, Lidocaine, or Placebo in Out-of-Hospital Cardiac Arrest
N Engl J Med 2016; 374:1711-1722May 5, 2016DOI: 10.1056/NEJMoa1514204

心臓病内科

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Background

北米において年間30万人が院外心停止により死亡している。多くはVFもしくはpulselessVTによるものである。VFもしくはpulselessVTは電気ショックに反応性があることから最も治療可能であるとされているが、その多くはROSCを得られないことが多い。

アミオダロンやリドカインといった抗不整脈薬はショック抵抗性のVFもしくはpulselessVTに対する除細動の成功率を高めるために用いられる。これまでの報告ではアミオダロンやリドカインにより院外心停止の患者のROSC率や、生存入院率を高めるとされているが、退院時の生存率や神経学的予後への効果は未だ明らかではない。これらを調べる目的で、ショック抵抗性のVFもしくはpulselessVTによる院外心停止例においてアミオダロン、リドカイン、プラセボによる比較を行った。

Methods

ROCに参加している北米10施設の55の救急隊が患者の登録を行った。

Patient

選択基準

・18歳以上
・非外傷性の院外心停止
・1回以上のショックを施行後もVFもしくはpulselessVTが持続、再発
・静脈路あるいは骨髄路が確保可能

除外基準

・open-labelのアミオダロン、リドカイン静注例
・アミオダロン、リドカインへのアレルギーがあると判明している

Intervention

アミオダロン、リドカイン、生理食塩水が用意された。これらは3本のシリンジで1キットとされ、同様にパッケージし区別がつかないようにした。各々のシリンジは3mlの無色の液体であり、内容はアミオダロン150mg、リドカイン60mg、生理食塩水3mlであった(よって1キットアミオダロン450mg、リドカイン180mg)。これらのキットが救急隊員に1:1:1の割合で配られた。

Protocol

院外心停止の患者は、AHAのガイドラインに従って蘇生措置が行われた。1回以上のショックが失敗に終わった後に、昇圧剤の投与とともに、ランダムに割り当てられたtrial drug 1キットが開封された。患者や救急隊員には何が使用されたかは隠された。薬剤はまず2本のシリンジ(体重45,4kg以下の患者は1本)が急速ボーラス投与された。

その後もVFもしくはpulselessVTが持続する場合、標準的な蘇生措置、ショックとともに、同じ薬剤をもう1シリンジ投与した。その後は、AHAのガイドラインに従った蘇生措置が病院到着まで行われた。ただし、open-labelのアミオダロン、リドカインは使用しないこととした。

病院到着後は、必要に応じてopen-labelのアミオダロン、リドカインも使用可能とし、AHAのガイドラインにそって治療が継続された。

Data

Primary outcomeは退院時の生存率とした。
Secondary outcomeは退院時の良好な神経学的予後とし、その定義はmodified Rankin scale≦3とした。

Analysis

退院時生存率をアミオダロン群29.7%、プラセボ群で23.4%と仮定し、power 90%、αlevel 0.05となるよう必要なper protocol のサンプルサイズはn=3000(各グループ1000人ずつ)と計算された。

各解析は有意水準5%の両側検定で行われた。

Result

Intention to treat population では4653例が登録され、per protocol population ではアミオダロン974例、リドカイン993例、プラセボ1059例の計3026例が登録された。各群のpatient characteristics、event characteristicsに大きな相違は見られなかった。(Table1 and 2)

Primary outcome (table3)

退院時生存率は、アミオダロン群 24.4% リドカイン群 23.7% プラセボ群 21.0%であり、risk differenceは アミオダロンvsプラセボでは3.2ポイント(95%CI,-0.4to7.0 p=0.08) リドカインvsプラセボでは2.6ポイント(95%CI,-1.0to6.3 p=0.16)、アミオダロンvsリドカインでは0.7ポイント(95%CI,-3.2to4.7 p=0.70)であった。

Secondary outcome (table3)
退院時の良好な神経学的予後の割合はアミオダロン群で18.8%、リドカイン群で17.5%、プラセボ群で16.6%であった。risk differenceは アミオダロンvsプラセボでは2.2ポイント(95%CI,-1.1to5.6 p=0.19) リドカインvsプラセボでは0.9ポイント(95%CI,-2.4to4.2 p=0.59)、アミオダロンvsリドカインでは1.3ポイント(95%CI,-2.1to4.8 p=0.44)であった。

Sub groups

目撃者のある心停止の患者では、退院時生存率がアミオダロン群は27.7%、リドカイン群は27.8%、プラセボ群22.7%であり,実薬群で有意に高かった(実薬群間に差はなかった)。一方、目撃のない心停止の患者では、3群間で有意差はなかった。

Mechanistic outcome

・プラセボ群では実薬群より3本シリンジを使っている割合、ショックの回数、リズムコントロールの薬の使用割合が高かった。
・リドカイン群はプラセボ群より病院到着時のROSC率が高かった。
・実薬群は生存入院例が多く、入院中の心肺蘇生が少なかった。
・入院後24時間以内の抗不整脈薬の使用が、リドカイン群、プラセボ群に比べて、アミオダロン群で少なかった。

Adverse event(table4)

・予測された薬剤関連の有害事象や、重篤な副作用に関して、3群で有意差はなかった。
・薬剤投与後に一時的心臓ペーシングが必要となった割合はアミオダロン群が他の2群よりも高かった。

Intention to treat population
・primary outcome 、Secondary outcomeにおいて3群で有意差は見られなかった。

Discussion

今回のランダム化二重盲検法による比較において、アミオダロンやリドカインは退院時生存率や退院時の良好な神経学的予後に寄与しなかった。またアミオダロンとリドカインにも有意差は見られなかった。

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