肝肺症候群
肺症候群は肝疾患の存在、低酸素血症、肺内血管の拡張を3主徴とする疾患群の総称で、肝疾患を有する低酸素血を呈する全ての患者で鑑別にあがります。肝硬変患者の15~20%に肝肺症候群が生じると報告されています。サルコイドーシスが肝硬変や門脈圧亢進症を起こす頻度は約1%、肝肺症候群を起こす頻度は更に低く極めて稀であり、本疾患により肝疾患を有する患者の予後は有意に短縮されます。その診断のポイントは肺内血管の拡張を証明することです。臨床的には肺内シャントの増加を証明することで間接的に肺内血管の拡張を証明します。症状としては低酸素血症による呼吸苦を呈し、特に立位での悪化を認めます。診断の一番のポイントである肺内シャントの証明ために肺血流シンチが行われます。現在治療法としては肝移植以外の有効な治療法はありません。
肝肺症候群による低酸素血症の発症機序
まだ明らかな発生機序はわかっておりませんが、以下のことが考えられています。
肝障害が進むことでNOなどの血管拡張物質の産生増加や分解の低下を引き起こします。すると主に肺底部の毛細血管から拡張をきたし、結果として換気血流不均衡の増大と肺内シャントの増加をきたし、低酸素血症を呈するようになります。肝疾患を有し、原因の特定できない低酸素血症を認めた場合、肝肺症候群を鑑別の一つに挙げる必要があり、稀ではあるがサルコイドーシスも原因となり得ることを認識すべきです。