急性冠症候群
急性冠症候群(ACS)は、冠動脈プラークの破綻やびらんとそれに伴う血小板凝集、引き続いて起こる血栓形成が基本病態であり、これらによって冠動脈閉塞が起こるとST上昇型急性心筋梗塞(STEMI)となる。STEMIでは、いかに早期に再灌流を得るかが予後を改善するために重要である。欧米においては、PAMI trial、FRESCO trialなどの大規模試験の成績からも冠動脈インターベンション(PCI)が血栓溶解療法に優れる成績が報告されており、我が国においても現在PCIがSTEMI治療の主体として多く行われている。
Primary PCIのガイドライン
2013年の日本循環器学会における「ST上昇型急性心筋梗塞の診療に関するガイドライン」では、STEMIに対するprimary PCIの適応を次のように定めている。
クラス I
・発症 12 時間以内て゛医療チームと最初に接触してから責任病変をデバイスで再疎通するまでの時間(first medical contactあるいは door-to-device time)90 分以内の場合に primary PCI(ステント留置を含む) を考慮. (レベルA)
・症状の持続時間か゛ 3 時間以内て゛ありPCI を施行する ために必要な時間と血栓溶解療法開始まて゛にかかる時間の差か゛
①1時間以内である場合の primary PCI (レベルB)
②1時間以上である場合には血栓溶解療法を考慮(レベルB)
・症状が3時間以上持続する場合の primary PCI (レベルB)
・重症うっ血性心不全を伴う場合の primary PCI (レベルB)
・血栓溶解療法が禁忌で発症12時間以内の患者に対してできる限り迅速にprimary PCI を行う (レベルB)
クラス IIa
・発症12時間から24時間以内て゛次の項目のどれか1つ以上を満たす場合.
①重症うっ血性心不全(レベルC)
②不安定な血行動態または致死性不整脈などの電気生理的な不安定性(レベルC)
③持続する虚血徴候(レベルC)
クラス IIb
・発症12時間から24時間以内てで血行動態、および電気生理的に安定していて症状が消失している患者への primary PCI(レベルB)
クラス III
・血行動態が安定している患者に対する非梗塞血管へのprimary PCI(レベルB)
・発症後24時間以上経過しており、血行動態および電気生理的に安定していて症状が消失している患者へのprimary PCI (レベルA)
・厚生労働省の定める施設基準を満たさない施設やPCI に熟練していない術者が行う prima-ry PCI(レベルC)
以上のように、PCIは熟練した術者が適切な施設にて行うことが原則とされている。熟練した術者とは、PCIに関する学会指導医、認定医などのある基準に達した医師を指し、PCIの実施は熟練者によるか、その監督のもとに行われるべきであるとしている。